15:ドライブする夢(2)
次の晩の夢。
僕はまた走っている車の中で目が覚めた。
やっぱり夢の中で目が覚めた感覚がある。
眠っているのに目が覚めるとは変な感じだ。
あら、目が覚めたの。
マギーさんが昨晩と同じ格好で運転していた。
えぇ、 僕はそう言って、マギーさんを見た。
相変わらず髪の毛が風に踊っている。
ドリンクホルダーに水のペットボトルがあった。
昨日、コンビニで持ってきたやつか。
僕はそれを手にして、一口飲んだ。
マギーさんは、それをチラッと見て、
あははっと笑った。
車は砂漠の道を走っている。
今日はどこに行こうか。
マギーさんが僕に尋ねた。
さあ、分かりません。
夢の中ならなんでもありか。
でも、僕はどこも思いつかなかった。
じゃあ、山の上とかどうかな。
この世界の風景とか見たいでしょ。
マギーさんは運転中なのに、
僕の方をマジマジと見て、
ネッと、と言って笑った。
結構なスピードで車は走っている。
夢とはいえ、ちゃんと前を見て運転して欲しい。
いいですね、山の上。
山の上に行きたいです。
僕はちゃんと前を向いて欲しくて、そう早口で答えた。
マギーさんは、あははっと笑って、
じゃあそうしようと言って前を向いた。
マギーさんは、ハンドルを切って横道に入った。
薄茶色の丘を登っていく山道を走らせる。
緩やかなカーブが何回も続いていく。
樹木がないので、見晴らしがいい。
車がどんどん高く登っているのが分かった。
今まで走ってきた砂漠の一本道が眼下に見える。
そして、何もない山の頂に着いた。
そこは割りと広々としている。
マギーさんはそこで車を止めると、
ドアを開けて外に出た。
そして、あーあ、と言いながら背伸びをした。
僕も車を降りて、そこからの景色を眺めた。
ちょうど砂漠に日が落ちてくところだ。
その夕日の光で、
すべての景色がオレンジ色に染まっている。
きれいだなぁ。
僕は独り言のように言った。
マギーさんが僕の方をちらっと見て、
あははっと笑った。
僕は眺めを求めて、そこから少し歩いた。
腰を下ろせる小さな岩を見つけて座った。
そこから、日が落ちていく景色を眺めた。
空の高いところを、数羽の鳥たちが飛んでいった。
日が沈む直前に雲が燃えるように赤くなった。
そして、日が落ちると辺りは暗くなっていった。
ふと後ろを振り向くと、
そこにはマギーさんも車もなかった。
また置いてけぼりかぁ。
そう思って、前を向いたとき、
僕の目の前に大きなジャガーが座っていた。
ジャガーは無表情で僕をじっと見ている。
こんな状況は想定していなかった。
身体から嫌な汗が吹き出してくる。
僕は動いたら殺されるかもしれないと思った。
ジャガーは肉食動物特有の殺気を放っている。
これは夢だと分かっていても、緊張せずにいられない。
僕はじっとジャガーの目を見て、
刺激しないようにじっとしていた。
あははっと、どこかでマギーさんの笑い声がした。
僕は目が覚めた。
(続く…)
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