20:輪廻転生について
かつてスピリット・ウェイカーは私にこう語った。
あなたがより良く生きようとするとき、知識を増やしたり、能力に磨きをかけたり、心の在り方を変えようとする。そのようにあなたを好ましい状態にするものは世界のあちこちに置かれている。あなたはそれを探し求め、それを手に入れ、それを身に着けて自分にする。そして、その新しい自分を世界に評価してもらう。あなたはそうすることが自分を見つけることであり、満たすことだと思っている。
それは確かにあなたの人生の質を高めてくれるだろう。あなたの人生はより心地良ものになり、心配事も減って、幸せに暮らしていけるようになる。そう自分で実感すれば、あなたは自分をより良くすることに成功したと感じるに違いない。そして、自分は正しい選択をしたのだと確信するのだ。
だが、あなたを変えてくれるものは、この世界に数限りなく存在している。世界に在るそれらすべてを手に入れることは不可能だ。そして、それらは一度手に入れれば永遠に変わらないわけではない。それらは必ず変化していく。知識は忘れ去られ、能力は衰え、心の在り方は安定したり乱れたりする。心地よさは居心地の悪さになり、心配事は増えていき、幸せだと思うことも少なくなっていく。
あなたはそんな自分を見て諦めの境地になるか、あるいは更に世界から何かを手に入れようと努力する。どちらにしても、あなたは世界の変化する相から逃れることはできない。つまり、あなたがどんなに素晴らしい物を世界から手に入れたとしても、そのすべては自分自身に定着することなく失われていくということだ。
あなたは何かに取り憑かれたように世界を貪っている。だが、いつまでたっても、あなたは求めている自分になることができない。いつか、あなたは満たされないまま死んでいき、見つけることができなかった自分を探しに、またこの世界に生まれ戻ってくる。そうして、あなたは同じ人生を何万回も繰り返しているのだ。
それでも、あなたはこの人生の繰り返しに飽きることなく、死んだらまたこの世界に生まれ変わりたいとさえ望んでいる。あなたはそれが人の喜びであり、あたりまえのことだと信じて疑わない。もし、そんな自分の人生が歪んでいるのではないかと気づいたなら、そろそろこの世界とも決着をつける時が来ている。その決着のつけ方が、本当の自分を見つけるということだ。
本当の自分とは変化することなく、いつでもそこに存在している。そして、何よりもそれはひとつしかない。それは世界中に際限なく散りばめられた知識や能力の一種ではない。それは誰にとっても同じで、たったひとつなのだ。あなたがこの世界で見つけなければならないものは、このたったひとつの存在という自分であり、それはいつでもあなたの中にある。
あなたは世界から何かを手に入れて、自分を完成させようとすることに別れを告げる。そして、自分の中にあるひとつの存在を見つけて、自分を完成させることへと人生の方向を変えていく。そのとき、あなたの人生の価値が大きく変化する。
そう人生の方向を変えたとしても、あなたはいままでの現実的な人生を生きていくだろう。ただ、そう人生を生きながら、本当の自分を自分自身の中に見つけようとしている。今までの人生はただ単に経験を手に入れることだけだった。いま、あなたは心の中の記憶や感覚を手放しながら、ひとつしかない自分の核心に触れようとしている。
そのとき、あなたは世界から手に入れることと、それを捨て去ることを同時にしていることになる。それは相反することだ。あなたはそのことに戸惑いを感じるかもしれない。どちらが正しいのかと混乱するだろう。だが、それはどちらも正しい。それらを両立させるために、あなたは瞑想の時間だけ、すべてを捨てて、たったひとつの本当の自分を見つけようとすればいいのだ。
あなたが身体と心という自分で生きているときには、世界から色々な経験を手に入れることだ。それを避けようとしても不可能だ。たとえ、ひとりで山の中に隠れたとしても、あなたは世界との接点を消し去ることはできない。そんな無理なことに思いを巡らせるのはやめて、あなたと世界との経験は世界に任せておくことだ。
瞑想の時間だけは、そんな世界から隔絶された時間として、心の中の深いところにある自分自身を見つけるために、経験を捨て去ることをしていく。そうして、あなたが本当の自分自身を見つけて、それ自身になったとき、あなたは自分自身として完成される。
あなたが完成されたとき、世界も完成される。世界が完成されるためには、まず自分が完成される必要があるのだ。その後に、あなたが世界から手に入れようとすることや、手に入れたものさえ、たとえそれが変化するものだとしても、すべてが完成され満たされている。
あなたが本当の自分とはひとつの存在だと知ったとき、そのひとつは自分だけでなく世界すべての物事の核心だと知る。つまり、すべてが自分自身だということだ。世界のすべてが自分の核心と同じ存在で創られていると分かる。このことを自分自身で現実的な実感を伴って理解することが悟りだ。これを知れば、悟りについての教えは必要なくなる。知識や言葉を超えて、あなたが本物に触れたからだ。
人の人生経験や性格は千差万別だ。だが、この自分の核心だけはひとつしかなく、誰にとっても同じだ。自分を探していけば、誰もが例外なくこのひとつにたどり着く。あなたが際限のない輪廻転生から離れるためには、このことを自分で理解する必要がある。
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