かみむすび(84)静寂の森
深い森の中は静寂の透明な水に満たされている。
私はそこに溶けてふわりと漂っていた。
そこが静かだと気づいたとき、私は目覚めたのだ。
森の樹々を見回したので、透明な水が少し泡立った。
たちまちその泡が増えて、何も見えなくなった。
泡の弾ける音で森は騒がしくなった。
私は何が起きているのか分からずにそこでもがいた。
水は気体になり樹々は空になって光にあふれた。
私は雨に打たれた後のようにずぶ濡れで。
ようやくしてから呼吸することを思い出したのだ。
そこで立ち上がると大地には道ができた。
私はその道を歩き始めた。
それでも私はまだ静かな森の中にいたのだ。
透明な水の中で誰としているでもなく溶けていた。
処々で小さな泡ができては消えるのを見ていた。
泡の中で私が道を歩き始めるのを見ていた。
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