かみむすび(72)嵐が来る
嵐が来る前はその恐ろしさに息苦しくなる。
黒い絶望の霧が立ち込めて、私から力を奪うのだ。
風は次第に強くなり、大粒の雨が鳥のように空を舞う。
私は地面に這いつくばって、壊れそうな心の扉を必死に押さえる。
嵐は私を空高く巻き上げ、何度も大地に叩きつける。
目を閉じれば、黒い恐怖の世界がそこに築かれていく。
世界は痛みと疑いとが混じり合って、怒りと嘆きを吐き出している。
水路には黒い水が激しく流れ、小さな救いの声を押し流していく。
嵐が去れば、空は青く晴れ渡る。
私はそれを呆然と見上げて、歓びとも悲しみともつかぬ想いでいる。
私は傷ついているが、まだ息をして大地に立っている。
嵐は何のために私を痛めつけるのだろうか。
嵐が来ないように祈っても、それは必ずやってくる。
そうして私を泥混じりの水に叩きつけては無言で去るのだ。
私の心は何度も打ちひしがれ、弱った身体で立ち上がる。
そうして立ち上がる度に、何かをそこに見つけようとする。
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