かみむすび(70)沈黙の祈り
神の前に跪き手を合わせて目を閉じる。
私はそこで何を祈るべきなのだろうか。
この世界が自分に優しくなるようにだろうか。
私がここにいる時点で、世界は十分に優しい。
世界は自由に満ちていて、私をそこに解放している。
それでも私は神の前に跪き目を閉じて祈る。
そこで何を祈ればいいのかを知らないまま、沈黙に身を捧げる。
何かを祈らなければならないというわけでもない。
沈黙によって神とひとつの場所にいられればそれでいいのだ。
それこそが祈りなのだ。
言葉にしてしまえば祈りは遠く離れていく風のようだ。
沈黙の祈りは永遠の大地のように足元に感じられる。
沈黙の祈りは終わることなく私の中で続いていく。
神殿さえも私の中にあり、神の恩寵を抱きしめている。
私の瞳の奥にはそんな世界があり、沈黙がその扉なのだ。
そうして、この世界は私の祈りになる。
0コメント