かみむすび(69)美しい星
私は闇にあって奇跡のような美しい星に生まれた。
だが、そこに生きることは過酷だった。
泥の中で這いつくばって息をしているときには絶望する。
痛みに耐えているときには時の遅さを疎ましく思う。
優しい風が吹き、身体が暖かな陽の光に包まれる。
そんなときにはこの星に生まれてきた幸せを噛みしめる。
私は大地の力強さと空の広大さに抱かれて安らかに眠るのだ。
心には希望が満ちて、この時を止めたいとさえ願う。
私が何を思っても、この美しい星は黙って宇宙を巡っている。
太陽も黙って、この美しい星に光をそそぐ。
あらゆる天体は黙って、全宇宙を流転している。
私は黙って、それを見上げている。
この沈黙を知らなければ、悲しみは涙でしかないだろう。
歓びは微笑みでしかないだろう。
沈黙は美しい星に行き渡ってすべての時を満たしている。
絶望も希望も飲み込んで、いつも私を緩やかに包んでいるのだ。
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