かみむすび(60)心の静寂
古の本を紐解けば、その言葉は心の静寂を説く。
その預言者は完全な悟りに必要な相を静寂としている。
その悟りを得たいなら、心を静寂にしなければならない。
私は古い言葉に従って、その相に触れようとした。
少しでも心が静寂になれたなら、悟りに近づいた気がする。
だが、それはいつまでも完全な悟りにはならない。
心の騒がしさも相変わらずそこにあるからだ。
私はもっと静寂になるように修行を重ねていった。
どんな修行も心を静寂だけにすることはできない。
それは不可能なことなのではないかと思い始めた。
修行を重ねるほどに、完全な悟りが遠のく気がした。
それでも私は悟りへの道を歩んでいった。
ある日、私は心のなかで本当の自分に目覚めた。
そこで自分自身が静寂なのだと知った。
心を静寂にしようとしても、そこが静寂になることはない。
完全な悟りとは、すでに自分が静寂だと知ることなのだ。
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