かみむすび(58)静けさの尊厳
その駅に降り立つと、すぐに静けさを感じた。
私の感覚は街の喧騒に慣れてしまった。
世界にはこんな静けさがあることを思い出した。
静けさの中にも音は聞こえていたが、それは心地よかった。
風のざわめき、遠くの鳥の声、川のせせらぎ。
その背景には静けさが控えていて、すべてが大切にされていた。
私が歩く山道の足音でさえ、静けさの尊厳の中に抱かれていた。
どんな音も静けさを尊重して、控えめにしているようにも思えた。
見上げれば青空に白い雲が無音で流れていた。
音もなく太陽の光が山道を照らしていた。
風は音もなくやってきて、木々の葉を揺らしていった。
私は音もなく、ここに存在していた。
この静けさはどんな街の喧騒の中にもある。
喧騒に埋もれて、私が気づかずにいただけだ。
私が静けさであれば、それを忘れることはない。
どんな音でもこの静けさがあって存在できるのだ。
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