かみむすび(55)ひとりの道
私はその細い道を一人で歩いていた。
その道は間違っているよ、誰かがそう声をかけた。
振り向くと、息を切らしている人が真顔で私を見ていた。
そっちではないよ、こっちの道、そう言って別の道を指差した。
私はなぜこの道を歩いているのか自分でも分からなかった。
それなら、そちらの道を行くのもいいかもしれない。
私はその人の指差す道を歩くことにした。
この先はどこに行き着くのでしょうか、私はその人に尋ねた。
実は私もわからないのですよ、そう言ってその人は苦笑いをした。
すると、その道は間違っている、誰かがそう声をかけた。
振り向くと、別の人が息を切らして私たちの後ろに立っていた。
こっちの道だよ、そう言って別の道を指差した。
私たちはどこに行き着くかもしれない道を歩いていた。
それで、一緒にその人の指差す道を行くことにした。
いま私は一人で細い道を歩いている。
信じられるのは、自分がここを歩いていることだと知ったからだ。
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