かみむすび(53)小石の目覚め
この世界に目覚めたとき、私は小石だった。
自分で動くこともできず、じっと同じ場所にとどまっている。
周りを見渡せば、同じような小石たちが無数に置かれていた。
他の小石たちは何も考えていないようだったが、私は考えた。
小石であるなら小石として生きていかなければならない。
どうやったって小石が空を飛ぶ鳥にはなれないのだ。
小石としてできることを極めていけばいい。
だが、小石としてできることは何もなかった。
私は急に無力感に襲われて悲しくなった。
そのとき、心の奥の暗闇から声が聞こえた。
君がいなければ、大地は成り立たないのだよ。
私は小石でいることの尊厳を与えられた気がした。
その声がした方に目を向けると小さな穴を見つけた。
その穴を通り抜けていくと、とても広い場所に出た。
その瞬間に私は目覚めた。
私は大地になっていて、すべての小石たちを抱きかかえていた。
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