かみむすび(44)山頂の神
心地良い風が吹く山の頂、私は座って空と大地を見ていた。
そうしていると、私の思考は空の彼方にいるかのように静まった。
神がすぐ隣りに座っているのを感じていたが、私は神を見ようとは思わなかった。
見ようとすれば、神は消えてしまうと知っていたからだ。
私と神は黙って果てしない空と大地の景色を眺めていた。
私は、これでいいのだと思った。
これ以上のことは何もない。
圧倒的な存在がこの場所から放たれている。
私は立ち上がって空を見て、そして足元を見た。
何も失われてはいなかった。
私は振り返って、来た道を下り始めた。
それでも、何も失われてはいなかった。
神は私とともにいいて、決して離れることがない。
私が知りたかったことはそういうことだ。
私は山頂で空に消えてしまって、神になってしまった。
ただ私は山の頂で神だったことを思い出したのだ。
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