かみむすび(42)魂の物語
人生の物語が書かれた本がある。
それは重厚な革張りの本で古い図書館に収められている。
その壁一面に本が並び、それぞれが人生の時を紡ぐのだ。
魂がその中の一冊を手に取れば、物語は時を歩き始める。
ある魂が一冊の本を手にして、その物語の中に入っていった。
魂はその物語がどのように展開していくのかを知らない。
ページをめくるたびに、新しい出来事に遭遇する。
そして魂はその本が完結していることに気づくことはない。
魂は自分の選択でその時の人生を生きていると思っている。
そこで努力したり、怠惰になったり、成功したり、失敗したりを繰り返す。
しかし、それはすでに本に書かれていること。
魂はその本の筋書き通りに人生を歩んでいるだけだ。
あるとき、魂はそのことに気づくかもしれない。
そして自分の無力さを嘆くかもしれない。
しかし、人生をどう生きるのではなく、誰が生きているのかを知ったとき、
魂はその本の物語から自由になるのだ。
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