神の声 第3章:大樹の精霊(9)

「どこまでも透明で白い輝きを闇に放ち続ける神聖なる案内星よ」

「自分が誰かを知らないでいるなら」

「どれだけ世界から物事を手に入れようとも」

「それで願望が完成することはないのですね」


「そして、本当の自分を知ることは」

「願望を完成させることはできるけれども」

「世界から満たされることとはまったく関係がない」

「それを知ったとしても」

「世界から褒められたり、何かを与えられたりすることもない」


「そうだとするなら」

「生命は果たしてどちらを選択するのでしょうか」

「おそらく、生命は何が自分に欠けているかを知っていても」

「それを無視して、世界から何かを手に入れようとするでしょう」

「何しろ、世界には有り余るほどの物と機会が溢れていて」

「生命たちがそれを手のするのを待っているのです」

「そんな世界の豊かさを無視して」

「心の中に眠る本当の自分を探そうと決意することは奇妙なことです」


「ほとんどの場合、生命は世界を選択します」

「そして、それを咎める者は誰もいません」

「いえ、それはむしろ生命として褒め称えられるでしょう」


「ただ、ここにいる誰もが」

「生きているこの瞬間の幸せを感じながら」

「同時に、心の中にある欠落も分かっていて」

「幸せという感覚でその喪失感を埋めようとしています」


「私は何を信じれば良いのでしょうか」

「いまここに生きているという実感なのか」

「それともまだ実感のない本当の自分という存在なのか」

「私は何を信じることにすればいいのでしょうか」

 精霊はそう男に尋ねた。


「偉大なる探求者にして闇に光をもたらす高徳な先導者よ」

「この世界で確実に信じられるものは何でしょうか」

「この世界は常に動いています」

「動くものは信頼することができません」

「なぜなら、信じていたものが」

「次の瞬間に別物になる可能性があるからです」


「別物になったものを見て、あなたはこれを信頼していたのではない」

「きっと、そう思うでしょう」

「それで、また世界の中に信頼できるものを探しに行きます」

「でも、何を見つけてきても同じことが起こります」

「世界は常に動いているということは決して変わらない事実だからです」

「そして、あなたはそんな世界の上に乗ったまま」

「絶え間なくその中を探し続けるのです」


「それは別段、悪いことではありません」

「このことは探求するという生命の意識を養ってくれます」

「ただ、世界には信頼できるものがないと分かったとき」

「殆どの人間は諦めの境地になります」

「信頼できるものなど世界には絶対に存在しないのだと」

「そう思って、落胆して人生を生きることになります」


「でも、信頼できるものは存在します」

「それは世界がどれだけ変化しても」

「決して変化することがありません」

「変化しないものこそ、その時のあなたが求めているものです」


「そして、それは誰でも手に入れることができます」

「なぜなら、すべての人は既にそれを手に入れているからです」

「つまり信頼できるものを手にしていながら」

「生命はそのことを忘れているのです」

「信頼できるものとは本当の自分である存在のことです」


「この存在のことをほとんどの人が気づくことができません」

「それは世界の何かのような対象ではないからです」

「存在のことを光であるとか不動であるとか言い表すことはできます」

「ただ、そこで自分を光や不動にしようとしても」

「存在自体を見出すことはできません」

「何かの対象となる物事は世界の変化の領域にあり」

「それがどんなものであれ」

「信頼できる存在になることはないのです」

「それが愛とか慈悲とかといった良いことであったとしてもです」

「それは良いことですが信頼できません」


「本当の自分という存在は」

「世界から離れた何もない領域に自分を同化させたときにのみ」

「あなたが理解できる状態になります」

「存在は自分自身なので何かの対象ではありません」

「今まで世界を認識してきた方法では」

「それを理解することができないのです」


「それは対象として無だといえます」

「無であるのですが、世界の何よりも存在感があります」

「どんな対象よりも確かさと明晰さにあふれ」

「それをあなたは直接感じることができます」

「つまりそれは無ではないということです」

「目には言えないけれども、確かに存在するのです」


「自分自身でそれを確かめられるのなら」

「それは信じることができるということです」

「誰かの言葉や体験ではありません」

「瞑想して、それは確実に変化せずそこに在ると」

「何度でもそれを自分で明晰に感じられるのです」


「それは決して世界のように変化しません」

「あなたが嬉しいときも悲しいときも」

「それは何事もなかったように同じように存在しています」

「太陽の光は様々なものを世界に浮かび上がらせますが」

「光そのものが世界ではないようにです」


「あなたはそれを自分自身の中に見つけて」

「それを十分に確かめて」

「そして、それを信じれば良いのです」

 男はそう精霊に答えた。


空風瞑想

空風瞑想は忘れてしまった本当の自分を取り戻す瞑想法です。瞑想の中で、今まで気が付かなかった心の新しい扉を開き、静寂でありながらも存在に満ち溢れ、完全に目覚めている本当の自分をそこに見つけます。それを自分の拠り所にすることで、人はその真実と共に蘇り、新しい自分として生きることを始めていきます。