神の声 第1章:天使と悪魔(4)

「まあまあ、オマエの気持ちは分かるがな」

「物を与えた時の人間どもの嬉しそうな顔が楽しくてな」

「つい与え過ぎちまうんだ」

「それを失って悲しんでいる人間どもに」

「それをまた返してやると」

「それはまた嬉しそうな顔になるぞ」

「オマエも一度やってみればいい」

「面白くてやみつきになるぜ」

 悪魔はそう言って嬉しそうな顔をした。


「オレがオマエと同じ真似をしてどうするんだ」

「それこそ世界はカオスになっていくぞ」

「オマエの心が弱すぎるんだよ」

「もっと毅然としてくれ」

「限度とか節度とかだな、そういうものだ」

「オマエに必要なのは」

 天使のイライラは収まらない。


「まあ、確かに、確かにそうだ」

「人間どもを混乱させたのはオレのせいかもしれねえな」

「つい調子に乗っちまった…」

「人間どもにも神のことで誤解を与えたかもしれん」

「神は何でも願えば与えてくれる存在だとな」

「それでオマエに負担をかけちまった」

「まあ、そこはちょっと反省するぜ…」

「で、これからどうすればいい」

「人間どもの願いを無視していればいいか」

 悪魔は両手を合わせて謝るような格好をした。


「うむ、まあオレも根に持っているわけじゃない」

「オマエがいないとオレも困るしな…」

「それにだ、オレたちには神をどうするかという問題と」

「もうひとつ大きな問題を抱えている」

「それも二人で考えていかなければならん」

 天使は落ち着きを取り戻した。


「もうひとつの問題って」

「あれか、インターネットか」

 悪魔の黄色い目が闇の中でキラリと光った。


「そうだ、インターネットだ」

「これは神問題と少なからずリンクしているよな」

「人間たちはインターネットを使うことで」

「色々なものを手に入れたり」

「それに奪われたりしている」

「はじめ、オレは人間たちがインターネットを使ってくれて喜んだものだ」

「オレの仕事が楽なるってな」

「だがな、そこには落とし穴があるって気がついたのさ」

「人間たちがそこに依存し始めた」

「神に依存するよりも強くな」

「インターネットが何かを与えてくれて、何かを奪うということは」

「オレたちの仕事が奪われるということだ」

「それはつまり、インターネットが神になってしまうということだ」

「それは流石に困る」

「オレはインターネットを取り上げようとしたが」

「これは無理だった」

「もうインターネットなしに人間社会が成り立たなくなっている」

「もしかすると、人間たちは滅亡してしまうかもしれん」

「インターネットがこれ以上勢力を強くしたなら」

「オレたちもコントロールできない状況になる」

「そしたら、神の存在もオレたちの存在も危うい状態だ」

「それでオレたちもこんな暗闇でコソコソするしかなくなったんだしな」

「そうだろ」

 天使は悪魔に同意を促すような目をした。


「忌々しいインターネットか」

「まあ、これを最初に人間どもに与えたのはオレだが」

「初めはほんのお遊び程度だったんだぜ」

「人間どもも当初はあまり期待していなかったし」

「むしろ批判的な人間もいたから放っていおいた」

「だがな、気がついたらこの有様よ」

「こんなあっという間に自然増殖するとは思わなかったぜ」

「想定外のことだ」

「オレが関わったのは最初だけなんだぜ」

「ちょっと世界を楽してやろうと思っただけだ」

「それは信じてくれ」

「オレだって自分の首を締めるようなまねはしねえ」

「そのせいでオレも居場所がなくなってきた」

「人間どもはそのうちインターネットを神にしちまう」

「いまこそオレたちが力を合わせねえと」

「世界にとんでもない神が創造されて」

「人間どもを滅ぼすどころか」

「その前に、オレたちが滅ぼされちまう」

 悪魔はそう言って身震いをした。


「だからだよ、これから神が重要になってくるのは」

「インターネットに負けない神をオレたちが世界に送り出さないとな」

「オレたちを守るためにも神は必要なんだ」

「あらためて人間たちに神はいると信じさせて」

「オレたちの存在を思い出させないとまずい」

「人間たちがインターネットを神にしてしまえば」

「オレたちは消滅して、そして人間たちも滅ぶ」

「きっとそうなる」

「そうなったら最悪だ」

 天使はゴクリとツバを飲み込んだ。


「インターネットに対抗できる神って」

「どんな神だ」

「どんな神ならインターネットを倒せる」

「それが分からないと太刀打ちできないぜ」

 悪魔は絶望的に困った顔で天使を見た。


 確かに僕もインターネットを使う。

 それで本を読むことも人に何かを聞くことも少なくなった。

 インターネットで調べれば大抵のことは分かるし、

 そこで画面越しに誰かとつながることさえできる。

 リアルな体験も大切にはしているけど、

 それも昔ほどの新鮮さがなくなったような気がする。

空風瞑想

空風瞑想は忘れてしまった本当の自分を取り戻す瞑想法です。瞑想の中で、今まで気が付かなかった心の新しい扉を開き、静寂でありながらも存在に満ち溢れ、完全に目覚めている本当の自分をそこに見つけます。それを自分の拠り所にすることで、人はその真実と共に蘇り、新しい自分として生きることを始めていきます。