青の記憶(24)役に立つこと


「青ー、いるかー」

アンスロポスが部屋に入ってきた。


「はいはい、いますよ」

青はアンスロポスを迎え入れた。


「青、人生にはいろいろと問題が起こるよな」

「それに対して、瞑想は何かの役に立つのか」

「もちろん、瞑想は本当の自分を知ることだと」

「それは分かっている」

「でも、何かしらの影響はあるんじゃないのか」

アンスロポスは青の顔をじっと見つめた。


星は何かを期待している雰囲気だ。


「そうですね」

「実は瞑想は人生の問題の役には立ちます」

「ただ、アンスロポスさんの思っている」

「形ではないかもしれませんが」

青はちょっと困った顔でアンスロポスを見た。


「それはどういうことなんだ」

「問題が簡単に解決されるということでは」

「ないということか」

アンスロポスは少し気落ちしたような口調だ。


「はい、瞑想で問題が解決される」

「ということではありません」

「瞑想でアンスロポスさんが本当の自分を知ったなら」

「そこで自分は問題に影響されることがなくなります」

「でも、依然として問題はそこにある」

「その問題に対して」

「アンスロポスさんは何かをするでしょう」

「そうしなければならないという必要性に迫られます」


「そして、その結果が成功したり、失敗したりします」

「それでも本当の自分は変わりません」

「本当の自分は」

「アンスロポスさん個人やその問題を」

「静かに俯瞰しているだけです」

「そして、それに何の手出しもしません」

「それは手出しをする必要がないからです」


「個人が問題で苦しんでいるのに」

「手出しをしないのは無慈悲だと思うかもしれません」

「でも、本当の自分にとって」

「そこに問題は何もないし」

「それに対して個人がどう対処して」

「その結果がどうであれ」

「本当の自分はそれで満足しているんです」


「これが瞑想をして」

「本当の自分を知ることで起こる」

「役に立つことです」


「もし、瞑想が問題に対して」

「何かの解決策を与えるとするなら」

「それが間違いの始まりになります」


「アンスロポスさんが瞑想して」

「そこで何かの解決策を思いついたり」

「思いもしなかった助けがあったりすると」

「きっと、瞑想していたからだ」

「瞑想が自分を助けてくれたと」

「うれしく思うかもしれません」


「逆に、瞑想をしていても」

「何の解決策も浮かばず」

「問題がこじれていったとしたらどうでしょう」

「瞑想など人生に何の役にも立たない」

「役に立たないなら」

「もう止めてしまおうと」

「腹が立つかもしれません」


「そこには個人では計り知れない」

「宇宙の意図があるかもしれませんが」

「そんなことは個人にとっては迷惑なだけです」


「こうして、瞑想など人生の問題に対して」

「何の役にも立たない」

「この考えに行き着いてしまいます」


「そうなったら」

「アンスロポスさんは本当の自分を知る機会を失い」

「個人という檻の中から」

「解放されることはなくなります」


「そして、いつまでも」

「何か自分に役に立つ良いものはないかと」

「永遠に世界をさ迷うことになるのです」


「これが個人にとっての」

「最悪の問題なんです」

「だから、瞑想は人生の問題の役には立たない」

「そうしておくことが」

「結果的に一番役に立つことになります」


「そして、本当の自分であれば」

「そういうことだと理解することができます」

青はそこまで言うと、フーっと息をついた。


「瞑想が役に立つのか立たないのか」

「さっぱり分からんな」


「役に立たせようとすると問題が悪化し」

「役に立つものではないと知っておけば」

「役に立つということなのか」


「また、ややこしい話だ…」

「ともかく、本当の自分ということが」

「分からなければ」

「どうにもならんということか」

アンスロポスは腕を組んで考え込んだ。


「まあ、ややこしい話ですね」

「ただ、本当の自分であれば」

「問題への見方もかわります」


「それは個人も問題も対処法も結果も」

「すべて自分だということです」

「つまり個人も自分、問題も自分」

「対処法も自分、結果も自分です」

「自分でないものはここに登場しません」

「その全体像を眺めているのも自分です」

「実は人生の問題はそんな感じでシンプルなんです」

青はそう言って微笑んだ。


「いやいや、とてもシンプルとは思えないぞ」

「かなり複雑で理解しがたい状態だ」

「どこからこの謎を解きほぐしていいやら」

「頭を抱えるほどだ」

「これが人生の一番の問題だな」

アンスロポスは青を見て眉間にシワを寄せた。


星から幾つものため息が漏れた。


「まあ、本当の自分を知らなければ」

「このことは理解できないかもしれません」

「でも、本当の自分を知ったなら」

「物事はとてもシンプルに見えてきます」

「自分はただそこにいるだけで」

「世界は変化しているだけですから」


「そうして、個人が何かを問題にして」

「それに取組んで結果が生まれてくる」

「本当の自分はその当事者として」

「そこにいながらも」

「同時に、それを俯瞰もしているんです」

どうです、と青は言った。


「うむむ、やっぱり本当の自分を知らなければ」

「この問題に答えは出なそうだな」

「…また来るとする」

アンスロポスはそう言うと、

頭を抱えながら部屋を出ていった。


星は混乱しているように騒がしくなった。


そして、次第に静かになっていった。

青はそれをただ静かに見つめた。

空風瞑想

空風瞑想は忘れてしまった本当の自分を取り戻す瞑想法です。瞑想の中で、今まで気が付かなかった心の新しい扉を開き、静寂でありながらも存在に満ち溢れ、完全に目覚めている本当の自分をそこに見つけていきます。そこを自分の拠り所にするとき、新しい自分の人生が始まっていきます。