青の記憶(12)価値

「青ー、入るぞー」

アンスロポスは部屋に入って、ドンと椅子に座った。


「久し振りですね、アンスロポスさん」

青は笑顔でアンスロポスを迎えた。


星はいつもの騒がしさが消えて、

静まり返っている。


「うむ、しばらく瞑想していたからな」

アンスロポスはちらっと青を見て言った。


「そうなんですね」

「それで、何か収穫はありましたか」

青はアンスロポスの目を覗き込むように見た。


「ああ、そうだな、収穫はあると言えばある」

アンスロポスは曖昧な言い方をした。


「いままで分かったことを振り返ってみた」

「自分とは誰なのか」

「それはそうして探している自分だと分かった」

「その自分は個人なのかどうか」

「それは個人ではないらしいと分かった」

「確かにそれは個人じゃない」

「ただ、そこにいるというだけの存在だ」

「それは分かる」

「だけどな、そこで引っかかる」

「それは本当にオレが探していた自分なのか」

「なんかこう、それにもっと輝きが欲しいんだよな」

「それは良いものなのかもしれないが」

「なんとも存在感がなんだな」

「そういうもんだと分かっているが」

「それで良いのかどうか」

「そこが飲み込めないところだ」

「青、それで良いのか」

「これで、自分が分かったといえるのか」

そう言うと、アンスロポスは青をじっと見た。


「自分が大事だと感じることは」

「その人のその物事に対する印象で大きく変わりますね」

「自分という存在はその印象がないんですから」

「無価値に感じてしまうのは仕方のないことです」

「だからこそ瞑想が大事なんです」

「瞑想だけが言葉なしでその答えを直接示せるから」

青もアンスロポスをじっと見た。


「それで、そのポイントは何なんだ」

アンスロポスは腕組みをして青を見ている。


「ポイントはアンスロポスさんの習慣を壊すことです」

青は事も無げにそう言った。


「習慣を壊すって…、どうやって壊すんだ」

アンスロポスは意味がつかめない。


「自分とはこういったもの」

「価値があるものとはこういうもの」

「そういった先入観を見直すんです」

「それは言葉で理解することではありません」

「それは言葉でないもの」

「つまり、瞑想で自分でいることを続けることで」

「本当のことを言葉なしに理解するしかありません」

「それで先入観と真実が入れ替わっていきます」

青は淡々とアンスロポスに答える。


「自分が設けている価値を壊すということか」

「壊れるということは真実ではないということだな」

「それに代わるものが、その自分になるんだな」

アンスロポスの口調も淡々としている。


「そうです」

「でも、それを信じるということでは駄目です」

「言葉ではない真実を自分でつかまないと」

青は釘を差した。


星がひそひそ話でざわついている。


「いままで自分が思い描いてきた価値を」

「手放したくないということは」

「まだ瞑想が足りないということか」

アンスロポスは腕組をしたまま目を閉じた。


「そうですね」

「それを理解するために瞑想がありますから」

「無理矢理ではなく、自然にそうであると分かるように」

青はそう言って微笑んだ。


「うむ、そうか、分かった」

アンスロポスはそう言って立ち上がると、

何かを思案するように部屋を出ていった。


星がにわかに騒がしくなった。

そして、また静かになった。

青はそれを聞いて、静かに息を吐いた。

空風瞑想

空風瞑想は忘れてしまった本当の自分を取り戻す瞑想法です。瞑想の中で、今まで気が付かなかった心の新しい扉を開き、静寂でありながらも存在に満ち溢れ、完全に目覚めている本当の自分をそこに見つけます。それを自分の拠り所にすることで、人はその真実と共に蘇り、新しい自分として生きることを始めていきます。