青の記憶(6)愛

「青、青、ちょっと聞いてくれるか」

アンスロポスが勢い込んで扉を開けたので、

バタンと大きな音が部屋に響いた。


青は椅子に座ってぼーっとしてたので、

驚いて飛び上がった。

「ちょっと、アンスロポスさん、驚かさないでくださいよ」


「あー、すまんすまん」

と言いながら、アンスロポスは大して気にしていない。


「青、あれだ、変わらないもの」

「それって愛のことじゃないのか」

「愛は変わらんだろう」

「愛が自分のことなんじゃないのか」

アンスロポスは目を輝かしている。


星は静かだったが、何となくウキウキしている。


「愛ですか」

「愛ではないですね」

「よく勘違いされますが」

青は冷静にそう言った。


「そんなわけないだろう」

「愛はいつも自分の中にあって変わらないぞ」

「それに愛は良いもんだろう」

「愛が自分なら、申し分ない」

アンスロポスは気落ちしながらも青に食い下がる。


「あの…、愛って変わるものですよ」

「アンスロポスさんは、いつでも誰でも愛せるんですか」

「その愛は絶対に変わりませんか」

「誰かを愛する気持ちはあるでしょう」

「でも、明日も間違いなくその人を」

「同じように愛していると保証できますか」

「それがコロコロ変わってしまうのなら本当の自分とはいえないんです」

青はアンスロポスの言葉に動じなかった。


「むむぅ…」

「確かに愛は変わるな…」

「愛ではダメなのか」

「分かったと思ったんだがな」

アンスロポスは残念そうだ。


「愛が悪いということではないですよ」

「それは本当の自分ではないということです」

「自分は絶対に変わってはいけないんです」

青はアンスロポスに念押しした。


「変わらない愛ということではどうなんだ」

「それを目指せば、変わらない自分になるんじゃないのか」

「その可能性はあるだろう」

アンスロポスはまだ納得しない。


星からも「そうだそうだ」と小さい声が上がった。


「まあ、無理やり変わらないようにすることはできますがね」

「でも、愛すること自体が変わる性質を持ってますから」

「それを動かないようにしようとするという点で」

「もう本当の自分としては失格なんです」

青は残念な目でアンスロポスを見た。


「そんな絶対変わらないものなんて、本当にあるのか、青」

アンスロポスは少し悔しそうだ。


星が落ち着きをなくしてざわついている。


「ありますよ」

「それは絶対に絶対に変わらないものです」

青はそう答えた。


「うむむ…」

「そうなのか」

「…」

「では、また来るとするか」

アンスロポスは気落ちした声でそう言うと

部屋を出て星に帰っていった。


星はまた騒がしくなった。

青はそれを聞いてちょっと苦笑いを浮かべた。


空風瞑想

空風瞑想は忘れてしまった本当の自分を取り戻す瞑想法です。瞑想の中で、今まで気が付かなかった心の新しい扉を開き、静寂でありながらも存在に満ち溢れ、完全に目覚めている本当の自分をそこに見つけていきます。そこを自分の拠り所にするとき、新しい自分の人生が始まっていきます。