ウロボロスの回廊 第5章(1)

 ハルさんは大丈夫だろうか。あれから半年が経った。僕は相変わらず、毎日公園通いだ。あのベンチでハルさんを待っている。

 あの消え方からすると、またダメージがあるのかもしれない。心配になる。

 それにしても、あのとき、僕は何かを見た気がした。その瞬間に強引に意識が浮上した。何を見たのか、思い出せない。

 だけど、それを見た衝撃だけが残っていて、それが心の中でくぼ地のような痕跡になっている。

 そして、そう、ハルさんの目の中にも、それを見た気がした。そう思ったけど、あのとき実際に見たのかどうか分からなくて、混乱してしまった。

 そんなはずはないと、そう思った気がする。すぐに、ハルさんは消えてしまったから、

それが何か確かめようがなかった。

 でも、あのときハルさんも驚いていた。僕と同じものを見たのだろうか。このままハルさんが現れなければ、それを確かめることもできない。きっと、その記憶は夢幻として処理されてしまう、そんな気がした。

 そうだったらそうで、ホッとするような思いもある。もうこのまま、何事も起こらないひとりの日常に戻ってもいい。ハルさんに戻ってきてほしいような、夢のままにしておきたいような、そんな複雑な気持ちが私の中で交錯する。

 それにしても、二人が一緒に目を閉じているときに何かが起こる。そうだ、あの警告のような大声は何だったんだろう。何度か聞いたけど、気に留めていなかった。

 自分の深いところに行こうとすると、そこに行くなと、あの声が警告してくる。なぜ、僕に警告するのだろうか。そして、なぜ僕はその警告を無視するのだろうか。

 もしかすると、あれがゴーストなのか。でも、僕の中のゴーストは死んでしまったはず。だとすると、あれはハルさんのゴーストか。

 もしかすると、僕たちはあのとき、ゴーストを超えていった。ゴーストは探ることができないほど深いところにいると言っていた。あのとき、そのゴーストよりも深いところに行ったのか。そこで何を見たのだろう。

 柔らかい風が僕の顔を撫でていった。それが気持ちよくて、ふと目を閉じた。そして、再び目を開けると、そこにハルさんの姿があった。ハルさんは静かに笑顔で立っていた。 僕は幻を見るかのように無表情でハルさんを見た。

「カイ、戻ってきたよ」

 ハルさんはそう言って、軽やかに僕の隣に座った。


(続く…)

空風瞑想

空風瞑想は忘れてしまった本当の自分を取り戻す瞑想法です。瞑想の中で、今まで気が付かなかった心の新しい扉を開き、静寂でありながらも存在に満ち溢れ、完全に目覚めている本当の自分をそこに見つけます。それを自分の拠り所にすることで、人はその真実と共に蘇り、新しい自分として生きることを始めていきます。