ウロボロスの回廊 第3章(3)

 僕はハルさんから目をそらして足元を見た。いったいここで何を喋ればいいか分からない。人類の絶滅を避けるとか、今の自分にはそもそも現実味がない話だ。

 プログラムと言われても、ピンと来ないし。そもそも人間にプログラムなんてできるのか。

「それは、人間の個人的なエゴを超えていくような何かが新しい人間には必要ということですかね」

 ハルさんの目に視線を戻して、思いつきで、そう言ってみた。的はずれなことを言っても、黙っているよりはマシだろう。カッコつけてもしょうがない。こいつはダメだとハルさんに思われてもいい。そう思ったなら、もっとマシなやつを探そうと思うだろう。

 ハルさんは、腕組みをして僕を見た。

「個人的なエゴを超える…か。それなんだな。それ、エゴについてはいろいろと原種の人間のプログラムで試してみたことがある」

「人間の持っているエゴを調整しようとすると、どうしても心に変な歪みが生まれてしまうんだ。亜人間では調整可能だったエゴが、原種の人間だととたんに不安定になる」

「人間と亜人間のプログラムはコアが違っている。人間は人間のコアしかないが、亜人間は二つのコアを持っている。その違いが影響しているのかもしれない」

「それでだ、人間のエゴのバランスを取ろうと数値を調整しても、何処かで急激に安全値から逸脱してしまう。簡単に言うと、バランスの良い状態にするためにエゴを調整する命令を設定する。その命令を正しく遂行しようとすると、結果的に自己を破壊してしまう、みたいな感じか。それはエゴをゼロにしても同じ結果になる」

「エゴというのは、人間にとってデリケートな問題なことは確かだな。エゴを超えるどころか、数値をいじっただけでこの始末だ」

 ハルさんはそう言って、困った顔をした。

「エゴの数値異常はゴーストに関係していることはありませんか」

 僕は以前の会話の記憶をたどって、ふと思いついた。

「確かに、その可能性はある」

 ハルさんはそう言って、ベンチに深く座り直した。

「そう思って調べたが、まあ、前にも話した通り、私たちの検索水準でゴーストを検出することは不可能。ゴーストは検知水準のはるか深いところに眠っている場合もあるらしい。それに、突然、幽霊のように現れたり消えたりする。この異常をゴーストのせいにすれば、もう手出しができない。お手上げということになる」

 カチカチッとクリック音が鳴った。


(続く…)

空風瞑想

空風瞑想は忘れてしまった本当の自分を取り戻す瞑想法です。瞑想の中で、今まで気が付かなかった心の新しい扉を開き、静寂でありながらも存在に満ち溢れ、完全に目覚めている本当の自分をそこに見つけます。それを自分の拠り所にすることで、人はその真実と共に蘇り、新しい自分として生きることを始めていきます。