ウロボロスの回廊 第3章(2)

「何となく、分かりました。そういうことなら、僕では役不足かもしれないけど、何か役に立てるのであれば…」

 そうは言ったが、ハルさんの話への理解は追いつかないし、僕の中の疑問は収まるどころか、深い混沌の中に落ちていくようだった。

「では、私からの説明を聞いてくれ」

 そう言ってハルさんは話を続けた。

「人間と亜人間についての話だ。この二つのプログラムには違いがあるが、一番の違いは個人的なエゴがあるかないかだ。人間は亜人間をつくるときに、個人的なエゴのプログラムを外した。外したというか、正確には洗練させた感じだ。個人を最優先するエゴを最小限にした」

「君にはいろいろなエゴがあるだろう」

ハルさんはそう言って、僕の顔を伺った。

「確かにエゴはありますね。エゴがあるから、いろいろなものを求めます。それは自分がどうしたいかから始まって、それを実現するために何かをします。でも、良いエゴと悪いエゴがあって、そのバランスがとても難しいですね。エゴを求めた結果が良いこともあるし、悪いこともあるしで」

 こんな答えで良いのだろうかと思いながら、ハルさんの反応を待った。

「…なるほどな。亜人間にそういった個人的なエゴがほとんどない。基本的に亜人間に優先されることは、全体のために何をするべきかだ。それを中心に探って、それを見つけて遂行していく」

「なぜ、そうなってるかというと、私たちをつくった人間が、その個人的なエゴによって人類社会をおかしな状況にしてしまったと思ったかららしい。もしかすると、そのために人間は絶滅の道を進み始めたのかもしれないと考えたんだな。それで、人間は亜人間をつくるときに、個人的なエゴを最小限に抑えたというわけだ」

「人間たちは、もう自分たちの世界は終わると思っていた。そうすることで、改良された人間とも言うべき亜人間にその後の世界を託したんだ。個人的なエゴを最小限にすれば、亜人間によって人類は永らえられると信じてな」

「だけど、亜人間も絶滅の道を進んでいる。個人的なエゴは最小限だが、それでもやっぱり駄目だった」

 カチッとクリック音が2回鳴った。

「前回の話と繰り返しになるが。そこで、私たちは基本的に保存された原種の人間のプログラムで、新しい人間を起動することにした。もちろん、それだけでは、また絶滅の道を進んでしまう。そうならないための修正をプログラムに加える必要がある」

「それが何かを残された短い時間で見つけなければならない。それを探るためのヒントが、現存する原種の人間である君の中にあると思っている」

 ハルさんはそう言って、僕の目を見た。

(続く…)


空風瞑想

空風瞑想は忘れてしまった本当の自分を取り戻す瞑想法です。瞑想の中で、今まで気が付かなかった心の新しい扉を開き、静寂でありながらも存在に満ち溢れ、完全に目覚めている本当の自分をそこに見つけます。それを自分の拠り所にすることで、人はその真実と共に蘇り、新しい自分として生きることを始めていきます。