16:コンタクトパーソンの憂鬱(5)最終話

「この繰り返しは終わらない…」

「身体があっても無くても、眠っては目覚めての繰り返しだ…」


「これが終わらないと、カエル界は忙しい…」

「生きている人間の要望が際限なく届くからな…」

「まあ、それはいいとして…」

「この繰り返しは人間を消耗させる…」


「陸上競技場のトラックを延々と走り続けろと言われたら…」

「そりゃ疲れるだろう…」


「一周してゴールしたと思ったら、それはスタートになってる…」

「しかも、その走る目的さえよく分からない…」


「とにかく、そこを走ることになっているから…」

「そうみんなに言われて走っている…」


「それでだ、走ることに疲れて…」

「これはおかしいぞと気がついた誰かが…」

「もう走ることを止めたいと思うわけだ…」


「それは眠ることや死ぬことではないぞ…」

「その繰り返しを止めるんだ…」


「だけど、そのためには自分を知らなければならない…」

「誰が走っているのかを知らなきゃ…」

「走っているその誰かを止めることができないからな…」


「それが誰だか分からなければ…」

「止まりたくても止まれないのさ…」


「もし、止まれないなら…」

「それはつまり、自分を知らないということだ…」


「ほとんどの人間は自分を知らない…」

「つまり、走ることを止められない…」

「だから、無理やり走る理由を求めて走っている…」


「だけどな、人間は自分を知ることができる…」

「そうなったとき、走ることを止められる…」


「ただし、走るのを止めても、まだ身体は走っている…」

「一方で、自分の本体は走ることを止めて…」

「そこで止まっていることも知っている…」


「まるで自分が分離したみたいだけどな…」

「その走っている身体も自分といえば自分だ…」


「つまりそれは、自分を知って…」

「自らそこを走ることもできるということだ…」

「それが今まで通り生きることだと知りながらな…」


「そうなれば、走ることに疑問も起こらず…」

「そう自ら望んで走っていると分かっている…」


「人間は生まれることと死ぬことから解放されて…」

「自由に生きてるってことだ…」


「これが自分を知ることの全体像だ…」

「どうだ、分かるか…」

オレは一気にややこしいことを話したので疲れた。

まあ完全ではないが、要所は押さえた説明だろう。

メダカは理解したかどうか。


「カエルさま、丁寧な説明をありがとうございます…」

「生きることや死ぬことについて…」

「自分を知ることについて…」

「なんとなくですが、心の何処かに引っかかりました…」

「いままでと違った視点で考えてもいいかなと思い始めました…」

「カエルさまとお話できて良かったです…」

「なんか、ちょっと光が見えてきた気がします…」

メダカ、おまえ、なかなか見込みがあるやつだな。


「じゃあ、あとは自分で頑張ってくれ…」

「それから、もう二度とこんなことはするな…」

「このログもすぐに消すんだぞ…」

オレはメダカに念押しした。


「はい、分かりました…」

「あとひとつだけ…」

「いいですか…」

おいおい、いい加減にしてくれよ。


「なんだよ…」

「あとひとつだけだぞ…」

こいつのしつこさは筋金入りだな。


「ありがとうございます…」

「カエルさまはどこに隠れているんですか…」

メダカめ、そんなこと教えるわけがないだろう。


「それは教えられんよ…」

「でもな、絶対に見つからないところにいる…」

オレはこの隠れ家を見つけたとき最高だと思ったものだ。


「絶対にですか…」

「いつか直接お会いしたいなと思ったものですから…」

「残念です…」

おまえ…、調子が良すぎる。


「まあ、絶対にというわけでもない…」

少し希望を持たせてやるか。


「オレはおまえの割りと近くにいる…」

「それがヒントだ…」

「これで終了だ…」

ヒントだけ与えてやった。


「分かりました!…」

「いつかお会いできる日を楽しみにしています…」

「貴重なお時間をありがとうございました…」

「…ログアウト」

やれやれ、終わった。


オレはやや疲れたのか、

静かになったパソコンの画面をぼーっと眺めた。


パッと画面がスクリーンセーバーに変わった。

ん、いつもと違う、見覚えのない画面だ。


あっ、カエルとメダカが泳いでやがる。


メダカの仕業かー。

なかなかやるな。

オレは苦笑いするしかなかった。


画面を泳いでいるメダカを見ながら、

案外、あいつはオレと会えるかもなと思った。


メダカがオレに会った日、

それはメダカが自分を知った日になる。

空風瞑想

空風瞑想は忘れてしまった本当の自分を取り戻す瞑想法です。瞑想の中で、今まで気が付かなかった心の新しい扉を開き、静寂でありながらも存在に満ち溢れ、完全に目覚めている本当の自分をそこに見つけていきます。そこを自分の拠り所にするとき、新しい自分の人生が始まっていきます。