14:天国にだれも来ない(1)

誰も来んなぁ。 

神さまは腕組みをして呟いた。 


誰も来ないですねぇ。 

お付きの小さな天使も腕組みをして呟く。  


なぜ、誰も天国に誰も来ないんじゃ。 

神さまは困った顔をする。 


天国は誰もいなくて、ガランとしている。  


神さま、天国に何もないっていうのが 

マズイんじゃないんですか。 

天使は上目遣いで神さまを見て言った。 


そんなことはないじゃろ。 

何もないのが天国に決まっておる。 

神さまは断言した。  


聞いた話じゃ、 

人間界では断捨離とかが流行っとるんじゃろ。 

みんな喜んで物を捨てておる。 

この天国はまさにその断捨離の最たるものじゃ。 

神さまは天使に力説した。 


神さま、あれは必要のないものを捨てるということで、 

全部捨てるということじゃありませんよ。  

そう天使がわけ知りに言ったので、 

神さまはちょっとムッとした。  


それにじゃ、 

何も要らない、生きているだけでいい、とか、 

そう人間は言うじゃろ。  


神さま、それは人生に希望を持とうとするときに言うんですよ。 

その後に人間はいろいろと手に入れますから。 

天使は呆れたように言った。 


考えすぎるな、頭を空っぽにしろとか、 

そういうことも言うじゃろ。 

ワシは確かに人間たちから聞いたぞ。 


神さま、それは一度原点に戻って、 

そこから考え直そうという意味ですよ。 


神さまは黙った。 


神さま、もしかして、そんな人間の情報をもとに、 

この天国を創ったんですか。 

天使は神さまをちょっと見下すように言った。  


オマエ、めんどくさいやつじゃな。 

ちょっと人間界に行って調べてこい。 


神さまは天使にそう言って、 

早く行けという目をした。 


はいはい、分かりました。 

天使はそう言ったが、 

内心、どっちがめんどくさいんだよと思った。 


しばらくして天使が戻ってきた。 


神さま、ただいま戻りました。  


おお早かったな、それで人間界はどんな具合じゃ。 

神さまは天使の報告を待ち切れない様子だ。 


それがですね…、 

いいニュースと悪いニュースがあります。  

えー、どちらを先にしますか。 

天使はもったいぶった言い方をした。 


何、どっちでもいい、 

いや、そうじゃな、 

いいニュースから聞こうか。 

神さまは早くしろと言わんばかりだ。 


では、いいニュースから報告します。 

天使は一度咳払いをした。 


わりと神さまは尊敬されてました。 

みんな天国に行きたいといっています。 

天使が得意気に話す。 


わりと…って、まあそれはいい。 

みんなは天国に行きたいと言ってたんじゃな。 

それはいいニュースじゃ。 

じゃが、誰も来ないのはどうしたわけじゃ。 


では、悪いニュースをお伝えします。 

天使はまた咳払いをした。 


みんな死んでから天国にではなく、 

また地上界に戻っていきます。  


それで地上界は人間であふれかえっていますが、 

それでも、地上界がいいみたいで。  


なんだと…。 あのごみごみした地上界から、 

この洗練された天国に来られるというのに、 

それを拒んでいるというのか。 

理解できんなぁ。 

神さまは腕を組んで目を閉じた。 


どうも、死んでから天国に来る道で ある噂が流れているようで。 

これは聞いた話ですがね。 

天使は眉間にしわを寄せた。 


天国はクソ面白くないところだと。  


えっと、クソ、という言葉は、 

聞いた話そのままの表現で、 

私の考えではありませんので…。 

あしからず。  


それで、みんな地上界へ引き返していくようなんです。 

天使は神さまの顔色をうかがった。  


まあ、たしかに天国はクソ面白いところではない。 

しかし、そんな噂が流れとるとはな。 

じゃが、天国を遊園地や酒場みたいにはできんしな。 

神さまはそう言って困った顔をした。 


神さま、あまりクソとかいう言葉は、 

使わないほうがいいですよ。 

一応、尊敬されているんですから。 

天使は神さまに、噂になりますとささやいた。  


うむむ、いちいち気に障るやつじゃ。 

神さまは天使をギョロッと睨んだ。  

で、神さま、どうします。 

死人たちに、天国はメチャクチャ面白いところだと、 

噂でも流しますか。 

天使は神さまに睨まれても意に介さない。  


それでは、神は詐欺師だとか、 

そういうことにもなりかねん。 

それはマズイじゃろ。 

神さまは腕を組んでう~んと唸った。 


そうだ、神さま、 

天国に行けば神さまと話ができるとかどうです。 

それなら、嘘ではないし、 

みんな、神さまと話ができるなら 

面白そうだと思うかもしれませんよ。 

私が受付をします。 

天使はさもいいアイディアだと言わんばかりだ。 


そんなことできるわけがないじゃろ。 

いったい何人の人間がいると思っておる。 

ワシもくたびれるわい。 

神さまは天使のポンコツな考えに泣きたくなった。 


じゃあ、神さまもアイディアを出してくださいよ。 

天使は、私だって頑張っているんですとむくれた。 


わかっておる…。 

まあ、そうむくれるな。 

神さまは天使をなだめた。 


そうじゃな、 

天国に来れば神になれると言うのはどうじゃ。 

神さまはちょっと得意気に言った。  


神さま、それは面白そうですけど、 

人間を神にすることなんかできるんですか。 

あまり大風呂敷広げると、あとで困りますよ。 

天使は疑いの目を向ける。 


オマエ、この天国を何だと思っておる。 

そもそも、ここは人間をヴァージョンアップさせるところじゃ。 

それが神になることだと言えば、嘘ではなかろう。 

神のワシが言うんじゃから、間違いはない。 

神さまはそう言って胸を張った。 


なんか、思いつきみたいで軽いですが、 

神さまにしてはいいアイディアかもしれませんね。 

天使は上から目線で言った。 


オマエは…。 

…、まあいい。 


では、オマエはこのことを 

人間たちに宣伝してくるんじゃ。 

天国に行けば神になれるとな。 


分かりました、神さま。 

天使は口は悪いが、聞き分けはいい。 


…続く



空風瞑想

空風瞑想は忘れてしまった本当の自分を取り戻す瞑想法です。瞑想の中で、今まで気が付かなかった心の新しい扉を開き、静寂でありながらも存在に満ち溢れ、完全に目覚めている本当の自分をそこに見つけます。それを自分の拠り所にすることで、人はその真実と共に蘇り、新しい自分として生きることを始めていきます。