13:光が私に語ったこと


仕事が終わって家に戻り、食事をする。 

風呂に入り、今日の疲れを癒やす。  

ソファーに座ってテレビを何とはなしに見て、 

眠くなったらベッドに横になり、 

そして目を閉じて朝を待つ。 

それが毎日、 私に繰り返されていく人生。 


その日、テレビを消したあと、 

ソファーの上で目を閉じると、 

心の中に光が現れた。 


身体は疲れて眠りたいのだが、 

なぜか心はとてもはっきりしていた。 


だから、心の中の光は夢というよりも 

とても現実的に見えた。  


いつもと違う感覚に戸惑ったが、 

身体が疲れているためか、 

私は何とはなしに光に見とれていた。 


そうしていることが、 

とても心地よかった。 


いつまでも、 

永遠にそうしていたいと思うくらいだ。 


やがて光は消えて、 

私は現実的な疲れた身体として、 

そこに取り残された。 


それから、この光は毎晩、 

心の中に現れるようになった。  


やがて、私はこの光が現れるのを、 

目を閉じて待つようになった。 


そして、その時間、 

ただ光とともにいることを楽しんだ。 


光は何か言いたげな気がした。 

だが、何もいわず、 

しばらく心の中にいると消えていく。 


ある日、私は光に話しかけてみた。 

あなたは誰なのですか。 


光は黙っていた。 


そして、しばらくすると、 

いつものように消えていった。 


それから毎晩、私は光に話しかけた。 

あなたは誰なのですか。  


無意味なことのようだが、 

その光には精霊のような知性がある気がしたのだ。 


ある晩のこと、 

いつものように光に話しかけたとき、 

光から声がした。 


私は…。 

そう言ったきり光は黙った。 


この光には知性がある。 

私はそう確信した。 


その後も、私は毎晩、 

光に誰なのかを聞き続けた。 


だが、光はたまに、私は…。と言うだけで、 

それ以上、何も話すことはなかった。 


それから何十年か経ち、 

私は年老いて、この身体から離れる時が来た。  


毎日、同じ生活をして、まあ、時には少し冒険もして、 

いつの間にか年をとって、ついに寿命を迎えたのだ。  


これは自然なことだ。 

生命なら、いつか命が終わる時が来る。 


私は死んで身体を離れた。 

死ぬとどうなるのか知らなかったが、 

私はどんどん空高く昇っていった。 


自然にそうなるので、自然に任せた。 

抵抗する理由もなかった。 


私は月に向かっていった。 

私が昇っていく先に月が見える。 


月は丸い星というよりは、 

光る門のようだった。 


そこには柔らかい光が溢れていて、 

その光は知性があるように感じられた。 


私はこの光はどこかで見た光だなと思った。 


月の光が目前になったとき、 

私はそこで止まった。 


月の光が優しく私を包む。 

私はずっとここにいたいと思った。  


そうして、 

光に包まれて静かに過ごす時間に、 

私は身を委ねていた。 


しばらくそうしていると、 

突然、光が私に声をかけてきた。 


あなたは誰ですか。 


あなたは誰ですか。 

光は何度もそう聞いてくる。 


私が誰なのか。 

そう問われると分からなくなる。 


いったい私は誰なのだ。 


あなたは誰ですか。 

光は一定の間隔で私に尋ねる。 


私はただ黙っていた。 


あなたは誰ですか。 


私は誰か。 

私は…。 


私は…。 

そこまで言って、 

その先の言葉が出てこない。 


あなたは誰ですか。 

何度、光から聞かれただろうか。 


やがて、月の光は弱くなっていった。 

月の門が閉じようとしているのだ。  


満月のようだった門は、半分になり、 

そして真っ暗になって閉じられた。 


私は真っ暗なところに取り残された。 


それからしばらくして、 

唐突に、私は明るい世界に飛び出した。 


突然の出来事に、 

私は恐ろしくなって泣き出した。 


今度はどこに連れて行かれたのか。 

私はどうなってしまうのか。 


そこは見慣れた場所だった。 

昔、人間として生きていた世界だ。 


ただ、私の身体が違っていた。 

とても小さい。 


自分を見て驚いた。 

私は赤ん坊になっていたのだ。  


それから、記憶が曖昧になっていった。 

私は生まれる以前のことを忘れていった。  


そして、赤ん坊として生まれたときからの 

記憶だけが積み重なっていった。 


私は大人になり、仕事を持ち、 

毎日の生活というものを持つようになった。 


仕事が終わると、家に帰り食事をする。 

風呂に入って、テレビを見る。 

そして眠くなればベッドで横になり、 

朝が来るまで目を閉じるのだ。  


あるとき、テレビを消して、 

そのままソファーの上で目を閉じた。 


いつもと違う感覚が起こって、 

私の心の中に光が現れた。 


それは丸い満月のような光だ。  

私はその不思議な光に魅入られた。 


とても懐かしい、そして優しい光だ。 


私はその光に話しかけてみた。 

それは何か精霊のような知性を感じたからだ。 


あなたは誰ですか。 


光は何か言いたげだが、黙ったままだ。 

やがて光は小さくなって消えていった。 


私は毎晩、光に語りかけた。 

あなたは誰ですか。 


ある日、光は私に答えた。 

私は…。 


私は…。 

それっきり何も言わない。 

それだけだった。 


ある晩のこと、 

いつものように私は光に語りかけた。 


あなたは誰ですか。 


光はそれに答えた。 

私は…、誰なのだろう。 


私は誰なのだろう。 

光は自分のことが誰だか分からないようだった。 


そして、光は私に尋ねた。 

あなたは誰ですか。 


私は光に質問された。 

いつもと違う状況に困惑した。 


私は…。 

私は…、誰だろう。 


私は誰なのか。 

私は誰なのか知らない。  


私は自分が誰だか知っているつもりだった。 

自分として見積み上げてきた記憶がある。 


だけど、それが不確かになった。 

心の中で光に話しかけている自分が、 

いったい誰なのか分からなくなった。 


私は誰なのか。 


光は優しく私を照らしている。 

私は光を見ている。 


私は誰なのか。 

それだけが大切な言葉に思えた。 


私はあなたです。 

私はあなたですよ。 


ふと、私はそう光に答えた。 

光は私の心の中にあるのだから、 

私は光だと思ったのだ。 


 …。あなたは私なのですか。 

光はそう言葉を返した。 


そうです。 

あなたは私です。 


光は言った。 

私もあなたです。 


そのとき、 

私は何かとひとつになった気がした。 


いままで私は別々だった。 

きっと、私は何かを探していた。 


それは自分が誰かということだ。 

それをはっきりと思い出した。 


あの月の門でのこと。 

誰が私に話しかけ、 誰が私に答えたのか。 


私はこれで自分とつながった気がした。 


いま、私は光とひとつになってここにいる。 

ここにいることが光なのだと知っている。 

空風瞑想

空風瞑想は忘れてしまった本当の自分を取り戻す瞑想法です。瞑想の中で、今まで気が付かなかった心の新しい扉を開き、静寂でありながらも存在に満ち溢れ、完全に目覚めている本当の自分をそこに見つけます。それを自分の拠り所にすることで、人はその真実と共に蘇り、新しい自分として生きることを始めていきます。