07:どうか私を助けてください


神さま、どうか私を助けてください。 


そんな人間の声が神さまの住む天界に伝えられた。 

だけども、神さまは何も答えなかった。 


神さま、どうか助けてください。 

このままでは生きる力を失ってしまいます。 


再び、人間の声が天界に伝えられた。 

神さまは黙ったままだ。  


神さま、そこにいるんでしょう。 

この声を聞いているなら、 

何とか手を差し伸べてくれませんか。 


人間の必死な声が、天界に伝えられる。 

でも、神さまは黙っている。 


それを傍受していた地獄の悪魔が、 

神に無視されている人間に同情した。 


神さまも何か言ってやればいいのに。 

まったく、可哀想に。 

慈悲の心ってものがないのかね。 


悪魔は人間があまりにも哀れに思えてきて、 

神さまの代わりに答えてやることにした。  


私は神だが、どうしたのかね。 

悪魔は自分を神と偽って、人間に声をかけた。 


ああ、神さま、よかった。 

私の声が届いたのですね。 


実は私には返せないほどの借金があり、 

身体も病気で日に日に悪くなっています。 

仕事は昨日クビになり、 

妻は家を出ていきました。 


私は人生に行き詰まってしまいました。 

どうかこの状態から私を救ってくれないでしょうか。  


悪魔は、その人生こそ私が人間に望んでいるものだよ、 

と言いたくなった。  


でも、自分を神と名乗ってしまったので、 

はてどうして答えたものかと思案した。 


人間を地獄に突き落とすのが悪魔の仕事だが、 

つい仏心を出したばっかりに、 

そこから救ってくれと頼まれてしまった。  


くっ、なんか面倒なことになったな。 

神のように黙っていればよかった。 


悪魔は人間なんかの声に応えてしまったことを後悔した。  


神さま、どうしましたか。 

どうか、どうか、私を助けてください。 

人間は悪魔に食い下がる。 


ちょっ、ちょっと待っててくれっ。  

悪魔は神さまらしからぬ、 

まったく威厳のない言葉を言わなければならなかった。 


オレは人間を不幸にする方法はたくさん知っているが、 

そこから救う方法は知らないぞ。 


しょうがない、 

こうなっては、その方法を神に聞いてみるか。 


悪魔は秘密の回線で天界の神に声をかけた。 

神さま、そこにいるなら聞いてくれ。 

この人間の不幸を解く方法を教えてくれないか。 


天界に悪魔の声が伝えられた。 

だが、神さまは黙っている。 


そうだよな、 

悪魔のオレに神がそんなことを教えるはずがない。 

自分の考えが甘かった。  


よく考えたら、人間の不幸は自分が放ったものだ。 

それを止めればいいのだ。 


悪魔はそのひらめきに心が踊った。 

なんて素晴らしい発想なんだと気持ちよくなった。 


人間よ、よく聞け。 

悪魔は人間に声をかけた。 


はい、神さま、ここで聞いています。 

人間が答える。 


オマエの借金は帳消しにする。 

病気も取り去ったから、健康になるだろう。 

明日、友だちからいい仕事が紹介される。 

妻も考え直して戻ってくる。 

悪魔はそう人間に伝えた。 


ありがとうございます。 

ほんとに、ありがとうございます。 

人間は何度も悪魔に礼を言って去っていった。 


悪魔はそれを聞いて気分が良くなった。 

人間を不幸にするもの悪くないが、 

こういうのもいいものだ。 


悪魔は人間たちに散々勝手なことをしてきた。 

悪魔の放つ力で、いとも簡単に人間は不幸になる。 


それで、この世界は不幸だらけになった。  


だが、それがあまりにも簡単すぎて、 

面白くなくなってきたところだ。 


悪魔はこういう楽しみもあるのだなと、 

新しい世界が開けた感じがした。 


そこで悪魔は不幸に嘆く人間の声を傍受しては、 

時々、その原因を取り除いてやった。 


人間たちは、 

そんな悪魔を「神さま」と呼んで感謝する。


「神さま」と呼ばれる悪魔もまんざらでもない。 

このまま本当に神になってやろうかと思うほどだ。 


天界の神さまは、 それを微笑みながら黙って見ていた。 

空風瞑想

空風瞑想は忘れてしまった本当の自分を取り戻す瞑想法です。瞑想の中で、今まで気が付かなかった心の新しい扉を開き、静寂でありながらも存在に満ち溢れ、完全に目覚めている本当の自分をそこに見つけます。それを自分の拠り所にすることで、人はその真実と共に蘇り、新しい自分として生きることを始めていきます。